2022年7月
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甲子園へ行こう! |
/ 作:三田紀房 / 発表年:2000年/ |
/ 掲載雑誌: 別冊ヤングマガジン→ヤングマガジン |
/巻数:全18巻/ 掲載時期:2000年〜2004年/ |
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【本作品とモグラの出会い】 ヤンキー漫画誌として長く成功してきたヤングマガジンだが、2000年前後には看板漫画の長期連載化、ヤングキング系・ヤングアニマル系への読者層の分散により売れ行きが落ちていた。そこで雑誌全体がギャグ漫画誌へと移行を試みていた時期に連載された作品。だがその内容はリアリズムを追求した完成度の高い野球漫画であり目を引いた。 【作者紹介】 (詳細は本文に記載) 岩手県出身、明治大学政治経済学部を卒業後に漫画家に転身。単行本デビューは「空を斬る」(アフターヌーン)であり、その後「クロカン」(漫画ゴラク)にて一部マニアの間で有名となる。本作「甲子園へ行こう!」でメジャー誌での長期連載に成功、2005年現在連載中の「ドラゴン桜」(モーニング)がドラマ化にまで至り、一躍有名人となった。 |
三田紀房氏は岩手県出身で、明治大学政治経済学部を卒業した後に漫画家に転身した方で、”ストーリーで魅せる作者”と評されることもあるように、独特なプロット・ストーリー展開が特徴的である。そのため漫画らしい再読性がやや低い反面、初めて読んだときのインパクトはきわめて大きい。恐らくは物事に対して独自の分析を行い、その分析結果・思考回路を元にストーリーを築き上げているのだろう。また、どの作品においても”リアリティの追求”と”人間心理の細やかな描写”を同時に盛り込むという離れ業に成功しており、なるほど経済学部出身者なのだなぁと実感できる。
三田氏の単行本としてのデビュー作は、氏が大学在籍当時剣道部員であったためか、野球漫画ではなく剣道漫画である。タイトルは「空を斬る」であり、アフタヌーンに連載された。野球は2作品目で取り上げられ、そのタイトルを「BOYS OF SUMMER」という。高校野球を描いた10作品からなる短編集だが、この短編集を読むと、現在の氏の代表作「クロカン」「甲子園へ行こう!」の原点となる三田氏らしい独自の目線を随所に感じることができる。
三田氏が高校野球にこれだけ独特の目線を持つようになったその背景には、氏の出身地である岩手県を含む東北地方の高校野球への力の入れ方と関係があるのかもしれない。もともと東北地方は東北高校・仙台育英という2強を有する宮城県が中心となって高校野球に力をいれていたが、85年のPL-東海大山形(29-7)の大敗を受け、山形県でも県を挙げての高校野球強化への取り組みがなされ、鶴岡ドリームスタジアムの整備・合宿所の建設・野球指導者の養成などが行われた。その結果今や、酒田南、羽黒、日大山形、東海大山形など複数の強豪校が誕生したことはご存知の通りである。このような背景から氏が高校野球に興味を持ち、漫画として取り上げようとした … というのは考えすぎだろうか?
いずれにせよ、三田氏は高校野球を「BOYS OF SUMMER」以降の作品でも取り上げ、「クロカン」を描きあげることになる。「クロカン」の内容は弱小高校にやってきた監督が、常識破りな指導でチームを次第に強化していくというもの。監督という大人の目線から見た高校野球のリアルに迫った当時非常に珍しい作品であり、今では知る人ぞ知る野球漫画の名作となっている。
その「クロカン」連載終了後に次の作品として描かれたのが、今回取り上げている「甲子園へ行こう!」である。本作では前作と対照的に、一人の生徒(選手)の目線から見た高校野球のリアルに迫っている。前作で描けなかった部分を、より洗練された描写力で描いた作品に仕上がっており、これまた名作である。前作の「クロカン」と共に本作を読めば、三田氏によって分析・考察された高校野球像を味わい尽くすことができるだろう。
未読の方にはぜひ三田氏の分析したリアルな高校野球像に触れていただきたいので、ここに「甲子園へ行こう!」を象徴するシーンを紹介しようと思う。もう読むことを決めた方は、この下の文章は一部ネタバレになるため、カーソルを合わせずに本屋に直行して頂きたい。カーソルを合わせた時に表示される文章は、興味はあるけど … と悩んでいる人向けに書かれているからだ。
軽いネタバレが含まれます。 「甲子園へ行こう!」を購入するかどうかお悩みの方、 もしくは既読の方のみ この文章にカーソルを合わせて下さい。
高校野球のリアルへの三田氏のこだわりは、独特な試合の見せ方にも見て取ることができる。個々のプレイを分かりやすく説明するために配置される解説役の人物が排除されているばかりではなく、白熱するシーンでは、台詞すら排除され、ただ見開きの絵だけが示される。この演出のおかげで、読者はあたかも実際の野球の白熱したシーンで、音も聞こえず固唾を飲んで見守っている観客であるかのような気分 ― 観客としての臨場感 ― をリアルに体験することができる。
ここまで読んでいただき、三田氏の作品に興味をもって頂いた読者のために、三田氏の他の作品をいくつか紹介して締めとしたいと思う。いずれもその設定からして目を引くことと思われるため、タイトルとともに設定を軽く紹介しておくことにしよう。プロットとストーリー性に富んだ三田氏の作品に是非一度触れてみていただきたい。
●「審判物語 バーディクト」 様々なスポーツを審判の視点から描いた短編集 ●「スカウト誠四郎」 プロ野球のスカウトを主人公に、プロ野球の裏側を描いた作品 ●「ドラゴン桜」 大学受験を舞台として様々な学習法をもとに東大合格を目指させるという異色作品
文中の漫画データ一覧
タイトル |
作者 |
連載雑誌 |
巻数 |
出版社 |
頭文字D |
しげの秀一 |
ヤングマガジン |
H17年 連載中 |
講談社 |
BE-BOP -HIGHSCHOOL |
きうちかずひろ |
ヤングマガジン |
全48巻 |
講談社 |
3×3EYES |
高田裕三 |
ヤングマガジン |
全40巻 |
講談社 |
工業哀歌 バレーボーイズ |
村田ひろゆき |
ヤングマガジン |
H17年 連載中 |
講談社 |
代紋TAKE2 |
渡辺潤 木内一雅 |
ヤングマガジン |
全62巻 |
講談社 |
アゴなしゲンと オレ物語 |
平本アキラ |
ヤングマガジン |
H17年 連載中 |
講談社 |
おやすみなさい |
小田原ドラゴン |
ヤングマガジン |
H17年 連載中 |
講談社 |
エリートヤンキー 三郎 |
阿部秀司 |
ヤングマガジン |
H17年 連載中 |
講談社 |
空を斬る |
三田紀房 |
アフターヌーン |
全1巻 |
講談社 |
クロカン |
三田紀房 |
漫画ゴラク |
全27巻 |
日本文芸社 |
ドラゴン桜 |
三田紀房 |
モーニング |
H17年 連載中 |
講談社 |
BOYS OF SUMMER |
三田紀房 |
ビッグコミック |
全1巻 |
小学館 | |
注)上記の文章は赤字の部分にカーソルを合わせると簡単な解説が表示されます。
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