ゆとりボードゲームロゴ
2019年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

 

大作と工作 / 作:桑沢アツオ / 発表年:1993 /
/ 掲載雑誌: ヤングサンデー/
/ 掲載時期:1993年11号〜1994年18号/ 巻数:全3巻 /
【本作品とモグラの出会い】
 連載当時はヤングサンデーを読んでいませんでしたが、この表紙、作者を見て即買いでした。あまり類を見ない設定・プロットが、この作者ならではの雰囲気で上手く料理されています。連載期間もちょうど良く、お勧めの作品です。
【作者紹介】
 「応援団緑山高校」でデビューし、一躍有名に。熱気あふれる豪快な設定・展開を特技とし、野球や格闘技などを中心に独自の世界観を築きあげています。その後”桑澤篤夫”と改名するなど、過去の成功作にとらわれず常に前向きに新ジャンルに挑戦する姿勢が素晴らしい作者です。
 『豪快』の一言にすぎる作風は、読者を選ぶため、誰にでもお勧めとは言い難いですが、一作品でも読めれば、マイナーな作品まで掘り下げて追ってみる価値はあるでしょう。
 ヤングサンデーは1984年「少年ビッグ」という名で始まり、その後「(隔週)ヤングサンデー」、「週刊ヤングサンデー」と変遷した。発刊当初には本雑誌の位置づけは非常に困難であった。それは他のヤング系雑誌(ヤングマガジン、ヤングジャンプ)と比べると、出版社にとっての位置づけが異なったためだとモグラは推測している。当時、ヤングマガジンやヤングジャンプは、それぞれの出版社の青年誌として中心的な位置づけにあった。しかしヤングサンデーを出版している小学館には既にビッグコミック系雑誌が存在しており、ヤングサンデーは青年誌として中心的な役割を果たすことができなかったのである。そのため、『ビッグコミック系にも少年サンデー系にも向いてないものを集めた雑誌』という中途半端な結果になってしまったのである。この推測は1987年から5年ほどの間に連載された漫画を知る人がほとんどいないことに裏付けされるのではないだろうか。結局、この雑誌、ヤングサンデーは少年サンデーの作家の充電期間や新人がサンデーに行く前のワンステップといった色合いが濃く、1年以内の短期連載漫画を中心とする雑誌となっていた。
 
 このように微妙な位置づけであったヤングサンデーも、雑誌開始から7〜8年となり、専属の作者が育ち始める。本作品は、ちょうどこのヤングサンデーが目を出し始めた1993年に、連載が開始された作品である。当時ヤングサンデーに連載されていた漫画を見てみると、「のぞき屋」(山本英夫)、「太郎」(細野不二彦)、「Bバージン」(山田玲司)、「花マル伝」(いわしげ孝)、「デカスロン」(山田芳裕)など青年漫画としてはメジャーな作品がずらーっと並んでいて、しかもいずれも連載直後であったことが分かる。こうした背景を鑑みると、本作品は『雑誌全体に力があふれている時には短期連載漫画の質も高い』というモグラが常に言う定説を地で行く作品とも言えるだろう。
 
 さて、表紙を見て頂けば分かるように、本作品は「大工漫画」である。このジャンルは専門的な話になると読者が楽しめず、”人”を描くにしても作品に華を持たせるのが難しく、リフォームブームとなった現在に至ってもあまり試みられていないジャンルである。「親方」(作:荒仁 画:山下京子)、「大棟梁」(西条真二)など数点見られるがいずれも成功を収めたとは言い難いと思う。モグラの知る限りでは、この漫画は大工漫画で1番の出来だと言って差し支えない。
 
 内容の概略は、『同じ日同じ村に生まれた2人・・・大作と工作。大工を親に持つ2人は芸術肌の大作・地道な修練を積みあげた秀才の工作と正反対の性格であった。2人がライバルとして大工の大会「技能グランプリ ジュニア部」で技を競い合うことに・・・。』といったもの。山の中から柱にふさわしい木を選んだり、与えられた積み木を組み上げるなどその技の競い方も面白く、紹介される豆知識はしっかりとした取材活動から得られたものと思われる分かりやすいものである。そのため、読者は難しいジャンルの漫画であるにも関わらず、モチベーションを落とすことなく最後まで一息に読めてしまう。
 
 この作品がこうした成功を収めている秘訣は、作者ならではの豪快さ・・・設定もストーリー展開も少し強引なくらいスパスパと進んでいくが、あまり違和感を与えない「勢い」であろう。ただ、同時に本作者の弱点でもある脇役の描かれ方の弱さ(人物設定がやや弱く、脇役が主人公の引き立て役としかならず長期連載ものにはなり得ない単純な骨格となってしまう)も見受けられる。そのため大作、工作の2人の主人公以外にもいい味を出しかけている登場人物はいるにも関わらず、結局うまく脇役を描き切れなかった感は残る。
 
 とはいえ、全3巻という連載期間の短さが、今挙げた弱点が作品全体に悪影響を及ぼすに至るのを防いでおり、十分に一般読者に紹介出来るレベルの作品だと言える。本作品は内容のレベルの高さにも関わらず、一般にはほとんど知られていない作品だけにぜひ目を通してもらいたい。
文中の漫画データ一覧
タイトル 作者 連載雑誌 巻数 出版社
応援団緑山高校 桑沢篤夫 ヤングジャンプ 全20巻 集英社
ストラック 原案:末田今日也
画:桑沢篤夫
アクション 全3巻 双葉社
幕末闘球伝ライヤ 桑沢篤夫 ヤングジャンプor
ヤングジャンプ増刊
全1巻 集英社
1ポンドの福音 高橋留美子 ヤングサンデー 3巻
(未完結)
小学館
ヒーロー志願 北崎拓 ヤングサンデー 全2巻 小学館
セイレン 村上もとか ヤングサンデー 全1巻 小学館
ルートパラダイス 久米田康治 ヤングサンデー 全2巻 小学館
のぞき屋 山本英夫 ヤングサンデー 全1巻 小学館
新・のぞき屋 山本英夫 ヤングサンデー 全11巻 小学館
太郎 細野不二彦 ヤングサンデー 全24巻 小学館
Bバージン 山田怜司 ヤングサンデー 全15巻 小学館
花マル伝 いわしげ孝 ヤングサンデー 全19巻 小学館
新・花マル伝 いわしげ孝 ヤングサンデー 全19巻 小学館
デカスロン 山田芳裕 ヤングサンデー 全23巻 小学館
親方 作:荒仁
画:山下京子
スーパージャンプ 全4巻 集英社
大棟梁 西条真二 少年サンデー
サンデースーパー
全3巻 小学館

注)上記の文章は赤字の部分にカーソルを合わせると簡単な解説が表示されます。