ちりばめられたこんぺい糖
寂れた無人駅のホーム。
こんぺい糖。ひまわり畑
そして、あの廃棄車両。
リガヤという名の、不思議な彼女を連想させる四大要素。
思えばそこから、あたしの夏は始まった――。
(冒頭より引用)
生まれたときから不幸な中学二年生、有賀海幸と芸術家肌の彼女の出会い。
廃線の錆びたレールの上で彼女は海幸に幽霊列車を蘇らせることを約束する。
海幸はそんな彼女に魅入られ、ひと夏付き合う気になってしまったのだ。
少女二人の物語です。
中学二年生と高校三年生、身長差もあわせて結構凸凹なコンビ。
男の入る隙間もなく、お約束に百合風味です。
あとがきによれば『LIGAYA』という言葉からこの物語は生まれたのだとか。
タガログ語で「幸せ」というこの言葉に裏打ちされた雰囲気は非常に気に入りました。
この本のレビューを書くのに読み返していると、
あちこち引用したくなる言葉に触れます。
けれどもそんな印象的なフレーズたちは、
無造作にちりばめられたこんぺい糖のようでいて
ここに抜き出してしまうと輝きを失ってしまうような、
そんな気がしています。
鮮やかで儚いイラストもよくはまって、
もはや夏はとうに過ぎてしまいましたが、
そんな季節に遠い夏を思うような、そんな物語です。